2008/02/15

カーニバル

●世界のお祭り●第12回 カーニバル〈謝肉祭〉(世界各地) 2月
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 冬の寒空を吹き飛ばすような華やかなカーニバルの様子が、今年も世界の各地から
伝えられるようになりました。カーニバルは、主にローマ・カトリックの国々で見ら
れるにぎやかなお祭りで、復活祭前の準備期間である四旬節の前に行われます。四旬
節は、日曜日をのぞく40日間、イエス・キリストの受難を思い起こし、派手なふるま
いや肉食を控える期間なので、その前に祝宴を開き肉を食べるようになったのが始ま
りだそうです。カーニバルという言葉はラテン語で肉を取り去るという意味の「カル
ネム・レウァーレ」が語源とされ、日本では「謝肉祭」と訳されています。
 カーニバルといえば、ブラジルのリオデジャネイロのものが有名ですが、それぞれ
の国で土着の農耕祭などと結びついたため、さまざまなバリエーションがあります。
身分に関係なくお祭りを楽しめるようにと、仮面をつけたり仮装したりすることが多
いようです。たとえば、アメリカのニューオーリンズでは、マルディ・グラと呼ばれ
る最終日に毎年世界じゅうから多くの観光客が集まり、派手なフロート(山車)や仮
装した人びとによるパレードを楽しみます。
 イタリアのベネチアでは、サンマルコ広場に大きなステージが設けられ、ショーが
繰り広げられるほか、仮面をつけた人びとが町じゅうを練り歩き、独特の雰囲気に包
まれます。一方、イタリア北部のイヴレーアという町では、馬車の上の兵士に向かっ
てオレンジを投げつける「オレンジ合戦」が3日間にわたって行われるそうです。
 イギリスでは、パンケーキを盛大に食べる「パンケーキ・デイ」があります。これ
は四旬節の前に卵や牛乳を食べつくすために始まったようです。ドイツのケルンのカ
ーニバルでは、おとぎの馬車などが繰り出して、集まった人びとにお菓子が投げられ
ます。
 いつもの町が夢のような世界に変わるカーニバルは、子どもたちにとっても楽しみ
なお祭りで、絵本や読み物にも多く登場します。時空を越え世界を旅する物語『スト
ラヴァガンザ――仮面の都』(メアリ・ホフマン作/乾侑美子訳/小学館)のエピロ
ーグは文字通り「カーニヴァル」と名づけられ、仮面をつけ、きらびやかな服を身に
つけた人びとが通りを踊り歩き、真夜中まで浮かれ騒ぐ様子が描かれています。
 また、レオ・レオニの絵本『みどりのしっぽのねずみ――かめんにとりつかれたね
ずみのはなし』(谷川俊太郎訳/好学社)では、森で平和に暮らしていた野ねずみた
ちが、町からやってきたねずみにマルディ・グラの話を聞いて、自分たちも仮面をか
ぶってパレードや舞踏会を開く、このような場面があります。

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みんなは おどった、うたった、そしてたのしんだ、つきが そらの いちばん た
かい ところに のぼるまで。
それから みんな くらい しげみの なかに かくれ、かめんを つけた。きのみ
きや、いわの うしろから、おそろしい うなりごえや、さけびや、かなきりごえを
あげて、こわがらせあい、するどいはと きばで、おどしあった。
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 この野ねずみたち、仮面をつけているうちに、いつしか本来の自分たちの姿を忘れ
てしまい、憎しみあい疑いあうようになってしまいます。ミステリアスでわくわくす
る仮面も、お祭りの間だけつけているからこそ、楽しいもののようですね。

★参考文献
『日本大百科全書』(小学館)
"Encyclopaedia Britannica"
『イタリア四季の旅』(田之倉稔著/東京書籍)
ベネチア市公式ウェブサイト(英語)
http://www.comune.venezia.it/flex/cm/pages/ServeBLOB.php/L/EN/IDPagina/1

                           (笹山裕子/村上利佳)