2013/03/01

刀悲しみ鑿愁う

箕面方面2月方面会読書、婦人之友2月号「羽仁もと子のことばー刀悲しみ鑿愁う」に引用されていた島崎藤村の詩です。
 
 
 
 
 
島崎藤村

「若菜集」より


  
 松島瑞巌寺に遊び葡萄栗鼠の木彫を観て


ふなじ      ずいがんじ
舟路も遠し瑞巌寺
ふゆしようしよう
冬 逍遥のこゝろなく
 
古き扉に身をよせて
 ひ だ   たくみ   うきぼり
飛騨の名匠の浮彫の
 
葡萄のかげにきて見れば
 
菩提の寺の冬の日に
かたなかな   のみうれ
刀 悲しみ鑿愁ふ
 
ほられて薄き葡萄葉の
            きねずみ
影にかくるゝ栗鼠よ
 
姿ばかりは隠すとも
             のみ  か
かくすよしなし鑿の香は
 
うしほにひゞく磯寺の
 
かねにこの日の暮るゝとも
ゆふやみ
夕闇かけてたゝずめば
 
こひしきやなぞ甚五郎